「安けりゃいいのか」


 と、最近つとに思います。言わずと知れたビール業界。 ビールの価格改定を口にするかと思いきや片や第三の ビールが話題沸騰。
 卸へのリベートカットや飲食店開店時の冷蔵庫の提供 廃止など流通経費を締めておいて、片や低価格商材の 開発に経費をつぎ込んで躍起になっている。これじゃあ 流通殺しかと愚痴もこぼしたくなります。

 それにしても第三のビールは350ml缶125円。ビール とはいえない代物といえどもアルコール飲料。
 アルコール飲料といえば、でんぷん質を酵素によって糖分に変え、その糖分を酵母によってアルコールに醸造 するという行程を経て作られています。
 一方、水道水に炭酸を溶け込ませ、酸味量と甘味料と香料をまぜて出来上がりのようなジュース類が120円で れっきとして売られています。

 メーカーは「ビールとの価格差は酒税分です」と説明していますが、ではジュースとの製造コストはたった5円ですか?

 かつて発泡酒の値下げ戦争が起きたときに、キリンが流通経費を削減して10円安い商品を出したり、サントリーが 缶に広告を入れてさらに安い商品をだしたりで、結局四社 揃って10円値下げした際には業界で400億円と言われる メリットのまったくない利益減を引き起こし、そこからビール会社の経営悪化が顕著になり、財務体質の弱いサッポロ ビールがつぶれそうになっている中、お上がサッポロ倒産の経済影響を懸念して、酒税逃れの第三のビールの知恵を授けたとかいう噂まで飛ぶ始末。

 それというのもディスカウントでも低価格居酒屋でもビールの 価格こそがその店が安いかどうかの指標のようになり、 冷酒や焼酎が一杯千円というメニューのならびにビールは 380円だ、キャンペーンで一杯100円だという扱い。

 まるでスーパーや薬局のティッシュや卵のようにWHO (世界保健機構)で中毒性などから厳しく販売制限がされて いる品種が売りさばかれているのはまったく解せません。

 卵も値段が上がらないのは鳥を団地のような籠から首だけ出せさせて流れてくる抗生物質たっぷりのエサを食べ、うしろ から卵を排出するシステムのおかげだし、テッシュも第三国の安い森林を伐採してジャンジャン運んでくる、国内でリサイクル するほうが経費が高いというようなシステムとなり、安売りとされる商品をありがたく買って、果たして皆が幸せなのだろうか と思いたくなります。

 ましてや安売り商品といえども製造者、流通者はそこから生まれる利益でメシをくい、家族を養っています。
 合理化による経費削減の結果の値下げではなく、ただの身銭を切って利益を削っての安売り合戦の結果は、そこに従事する製造・流通に携わる家庭への収入減となり、またそれらの家庭が生活苦から安さを求めて右往左往することと なり、また安いものしか売れないということになります。

 メーカーはかつて大手居酒屋チェーンの銘柄を変える為に多大な協賛金を積むような、4社のシェアのみを優先して利益 は後からついてくるような営業がありましたし、卸はそれらの帳合を得るために見積を取られるたびに他社の下をくぐるような営業をしてきました。

 その結果が酒屋の中のビール売上シェアが高いほど、その酒屋の経営指数は悪化するというような、まったくのお荷物に なり、ビールで儲ける為にはとにかく数量を売り、その物量 リベートで原価を下げ、そしてまた安売りをして他社の得意先 を攻めて行くという状態でした。

 そんな中で、キリンビールの提唱した新価格制度は、そういう物量リベートの廃止、つまりたくさん売っても安くなりませんよ、ということです。
 とある大手酒屋の社長さんが「この半生私はひたすら量を売ることで価格を追い商売して来た。それを今否定されても どうしたものか」と言っていたのを忘れられません。

 それにより、東京や大阪という大消費地から生まれる消費量による安値をもって地方に売りさばき更に量を伸ばし また安く仕入れるということがなくなります。
 他社の得意先を奪って販売量を増やしても仕入は安く なりません。
 よって「量を売って安くなる仕入を見越しての安値」は通用しなくなり、不変の仕入価格から経費や利益をきちんと 乗せた額で販売していくことがビール販売の基本となって いくわけです。
 それが今回の価格制度改定でビール販売価格が上がる 理由なわけです。

 ニュースでよく「アメリカの鉄鋼市場において日本のダンピングが提訴され・・・」と聞きますが、私もなぜ安くして いかんのか、と思っていましたが、鉄鋼原料の価格、製造 コスト、利益などを最低限算出した最低価格という概念が 日本人にはないためだと思います。
 今回はじめてビールという業界に、お上が酒税を健全に徴収する為だとしても導入された、コストオン方式、最低 価格・不当廉売という概念が日本の歯止めのないデフレに ブレーキをかける大切な試みだと考えています。

 ここで消費者のためという大義名分の大旗印をふって大量販売による圧力をかけ適正価格を拒否しつづける 大手流通にメーカーや業界が屈すれば、どの業界においても価格下落の歯止めは利かないのではないで しょうか。

 価格下落の行き着く先は、全ての業種において小さい売り手はどんどん淘汰され、大手の寡占・独占化が進み 、ほとんどの地場のお店屋さんはなくなり、商店街もなく、買物はすべて大手流通や全国チェーンの大型店。
 そこに従事できる一握りの人間以外は皆職にあぶれモノを買うことも無くモノは売れなくなり一段と経済が 疲弊していく・・・でしょうか。

 最低価格保証という概念から、最低限の利益を確保し、 その中から高品質、高付加価値への開発を進め、より よいものを適切な価格で売り買いしていく社会というのは 日本においてははたして理想なのでしょうか。

2005/04/23




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