まがい物の酒 − 「工業用アルコール」



 11月20日(H12)の朝のニュースで「工業用アルコール入り地酒を飲んで多数の病人発生」という声が聞こえてきました。てっきり日本のどこかの地酒メーカーが工業用アルコールを混ぜたのか?まさか日本でそんなバカなことをするのか?と心配しましたが、発展途上の国の話ということでほっとしました。
 とはいえ、日本も戦後はそういう話があったので、国の問題ではなくて、発展途上の経済下ではありうることなのです。

 さて、「工業用アルコール」とは「メチルアルコール」であり辞書には「木材乾留の精製液である木酢からとれるアルコールの一種。無色・有毒性。溶剤・ホルマリン製造用」とあります。
 一方お酒に使われているのは「醸造用アルコール」「エチルアルコール」のことです。作り方は、糖蜜(さとうきびの搾り液を煮詰めて冷し、砂糖の結晶を採った後の真っ黒くてどろどろした液体。糖分は50゜以上残っているとのこと)やでんぷん質の穀物を発酵させて作ったお酒を、連続蒸留してアルコール分90゜以上に煮詰めた純粋アルコールです。医療の消毒用にもつかわれます。甲焼酎やグレンウィスキーもこのようにつくられます。
 ちなみに本醸造・吟醸・大吟醸・ブレンデッドウィスキーには醸造用アルコールがつかわれていますが、それは杜氏やブレンダーが原酒のくせを押さえ、のみやすい味のよいお酒をつくるためにごく少量使用していることで、けっしてまがい物をつくっているのではありません。

 私の聞いた話では、戦時中は飛行機の燃料として醸造用アルコールが使われていたそうで、飲まれてしまわないように有害物質を混ぜていたそうです。それでも飲みたいのが人間の欲というもの。横流しして、闇市で一杯ずつ売られていたそうです。
 しかし有害であるため、グラスについで、マッチで火をつけ、有害成分をとばしていました、それでも目がつぶれた(見えなくなるということ)人がいたそうです。

 他の所でも書きましたが、戦後の米不足の時代には少しの清酒を増量するために醸造用アルコールを混ぜていました。(エチルアルコールは混ぜていないと思いますが…)いわゆる「アル添酒(アルコール添加酒)」ですが、あまり埋めすぎると薄っ辛くなってしまい限界があります。そこで「三倍増醸(醸造用アルコール・糖分・酸味料をつかい、増量し味を整えること)」という手段が考案され、現在でもつづいています。

 戦後「米鶴」など、つくりのよい人気のあるお酒の空瓶が売買されていた(他のお酒を詰めるため)そうですし、近年も「越乃寒梅」の瓶に違う酒を詰めていた人が捕まっています。
 そういえば、二世代前(私のおじいさんの頃)、酒屋に日本酒が樽で届いていて量り売りが一般的だった頃は、日本酒はかなり濃かったそうで、どこの酒屋もそれをいい具合に水で薄めて売っていたそうです。それを薄さを感じさせない程度にのばす腕のある酒屋が儲けを上げたそうです。
 また飲み屋さんでは「ボトルの詰め替え」が行われていたそうで、昔は「オールド」の瓶に「白角」を。バブルの頃、「とんねるずのみなさんのおかげです」のコントでは銀座のクラブで「ヘネシー」の瓶にどっかのブランデーをひしゃくとじょうろで詰め替えていたシーンがありました。
 浜松においては一回だけそういう話を聞いたことがありますが、現在うちのお客さんではそういう方はいらっしゃいませんのでご安心を。




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